2018年06月07日

キャリア・アンカー その@


◆キャリア・アンカー◆ その@

キャリア・アンカーとは、個人がキャリアを選択する際に、自分にとって最も大切で、これだけはどうしても犠牲にできないという価値観や欲求、動機、能力、自分の軸を指します。

アメリカ合衆国の組織心理学者、マサチューセッツ工科大学経営大学院、名誉教授エドガー・シャイン氏によって提唱されたキャリア理論の概念です。

船の“錨”(アンカー:Anchor)のように、職業人生の舵取りのよりどころとなるキャリア・アンカーは、生涯にわたってその人の重要な意思決定に影響を及ぼすとされています。

シャイン氏は主なキャリア・アンカーを「全般管理コンピタンス」「専門・職能別コンピタンス」「保障・安定」「起業家的創造性」「自律と独立」「社会への貢献」「純粋なチャレンジ」「ワーク・ライフ・バランス」の8つに分類しました。参考までに詳細を以下に掲載します。

キャリア・アンカーにどれが良いとか悪いとか正解はもちろんありません。
また、それが1つなのか、いくつ当てはまるのかも人それぞれです。
自分ならどれに当てはまるのか、どれが近いのかを一度考えてみましょう。
そうすることで自分自身の働く理由や意味、労働観、人生観を自問自答することができると思います。


1.全般管理コンピタンス
組織の中で責任ある役割を担うこと
→集団を統率し、権限を行使して、組織の中で責任ある役割を担うことに幸せを感じる

2.専門・職能別コンピタンス
自分の専門性や技術が高まること
→特定の分野で能力を発揮し、自分の専門性や技術が高まることに幸せを感じる

3.保障・安定
安定的に1つの組織に属すること
→一つの組織に忠誠を尽くし、社会的・経済的な安定を得ることを望む

4.起業家的創造性
クリエイティブに新しいことを生み出すこと
→リスクを恐れず、クリエイティブに新しいものを創り出すことを望む

5.自律と独立
自分で独立すること
→組織のルールや規則に縛られず、自分のやり方で仕事を進めていくことを望む

6.社会への貢献
社会を良くしたり他人に奉仕したりすること
→社会的に意義のあることを成し遂げる機会を、転職してでも求めようとする

7.純粋なチャレンジ
解決困難な問題に挑戦すること
→解決困難に見える問題の解決や手ごわいライバルとの競争にやりがいを感じる

8.ワーク・ライフ・バランス
個人的な欲求と、家族と、仕事とのバランス調整をすること
→個人的な欲求や家族の願望、自分の仕事などのバランスや調整に力をいれる


自分自身のキャリア・アンカーを知ることで、自己理解が深まり各個人のキャリアデザインに役立ちます。

それだけでなく組織も社員一人ひとりのキャリア・アンカーを見極めることで他者理解が深まり、適材適所の人員配置や職場内コミュニケーションの質の向上、効果的な研修体系の構築に活かすことができるのです。

また、上記の8つの分類を自問自答すると、仕事と生活のワーク・ライフは、明確にそう簡単に切り離すことができるモノではないということに気付きます。ワークもライフもどちらも大事で大切でつながりあるもので、ましては"バランス"を取るものではないということが分かるかと思います。
どちらも誠実かつ大切にする"ワーク・ライフ・インテグレーション"という考え方があります。かなり欲張りですがいつもこうありたいところです。


このキャリア・アンカーを通して、わたしたち自身が"自分らしいキャリア形成(キャリア自律)"を図る営みを続けることは、それらが結果的に利用者さまへの理解を深めることにもなり、より良い関わりにつながるのではないかと考えています。

わたしたちが提供する在宅リハの場面において、利用者支援を行なう上で、他者理解をするには、わたしたち自身が自己理解を深めることが欠かせないものになります。

自分自身のキャリア・アンカーを知ること、自己理解が、利用者さまを知ること、他者理解のきっかけになることもあります。

在宅リハの現場で、キャリア・アンカーの視点を利用者さまにあてて考えてみると、利用者さまが今までの仕事や日々の営みで大切にされてきたことが少し分かったような瞬間を度々経験しました。


クルマ好きな虎党のALS患者○○様は、病気や障害全てが初めて尽くしで、新たな人生の転機として、これからの生活や活動・参加の意思決定をサポートしました。

ナラティブアプローチのもと、たくさんの語りのなかで、"今まで"から"これから"を一緒に探索するお手伝いをしました。
▼ナラティブアプローチ等の詳細はこちら↓

そして、ポジティブアプローチのもと、最大限の目標イメージを共有し達成可能な目標を共に描いたことで、甲子園球場でのタイガース戦の観戦が当初の目標となりました。
▼ポジティブアプローチ等の詳細はこちら↓

草野球チームの監督さんでもあり、元水道管工事の仕事を職人気質で仲間と長くこなされてきた男気たっぷりな方です。

進行する障害で度々気が滅入る時もありました。
ある日の在宅リハのなかで、亡くなられた隣人さんの仏様に手を合わせていなかったことに深く悔いておられることを耳にしました。

進行する麻痺症状に加えてひきこもりがちな毎日だったなか、リハ担当者とご家族と一緒に大好きなクルマに乗って当時住んでいた場所まで行き、亡くなられた隣人のご家族にあいさつを果たされました。
▼その日の様子はこちら↓


病前から超アクティブな片麻痺患者の○○様は、メンタル不調もあるなか、やりたいことがたくさんあり、常に行動を起こして日々の営みを送られてきた方です。ひきこもり支援等のお仕事の傍ら、ボランティア活動や園芸等の趣味の幅も広い方です。

心身のケアをしながら、やりたいことである園芸の実行のサポートと次にやりたいことの聴取や整理等を毎週しています。
▼園芸等の様子はこちら↓


生活期・在宅リハの現場は、その人やその周りの人、その場の空気感にも合わせた多様かつ柔軟な関わりが求められているのではないかと思います。


"職業は人生の背骨である"
ドイツの哲学者ニーチェの金言です。

この金言からも利用者さまが経験されてきた職業、キャリアに焦点を当てることで、利用者さまの"その人らしさ"や"人となり"に迫ることができそうです。

キャリア・アンカーを通して、自分自身の価値観や欲求、動機、能力、自分の軸を知ることは、同時に利用者さまの"その人らしさ"、"人となり"に迫ることなのかもしれません。


参考文献等)

〇キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう エドガーH・シャイン著、金井壽宏訳 白桃書房

〇働くひとのためのキャリアデザイン 金井壽宏著 PHP研究所

○働く居場所の作り方 花田光世著 日本経済新聞社

○自分らしいキャリアのつくり方 高橋俊介著 PHP研究所

○allaboutより

○日本の人事部より


人材開発室 いとう
posted by Active at 12:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 人材開発室
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