2018年09月28日

もし子どもの頃に戻れるなら

九月場所。
ひとまず、稀勢の里関、10勝おめでとうございます。
優勝争いでの番狂わせを、最後の最後まで期待していましたが叶わず、白鵬関のメンタルの強さにうなりました。
ST水野です。


失語症の利用者さんと作文練習をすることがあります。

用意した単語を1〜3つ決めて作っていただく場合や、文の前半部分を提示してその続きを考えてもらう場合などがあります。

「もし子どもの頃に戻れるなら」から続けて、文を作っていただいたときのこと。

ある失語症の女性は課題を見て、言われました。
「そうやなあ。うちらの子どもの頃は貧しかってなあ。子どもの頃って、そんなに楽しいことってなかったねえ」

それでも話をしているうちに、夏休みには近くの川で友だちと遊んだ、水着がなかったからシミーズで泳いでいた、おやつは山の木の実だったなどのエピソードが出てきて、それを書いてくださいました。


他の失語症男性は課題を見て、考え込んでしまいました。
少し複雑な家庭環境で育ったことを以前にちらっと聞いたことがあったので、「マズイ問題だったかなあ」と不安になりながら、利用者さんが口を開いてくださるのを待ちました。

「じぶんはな、ちいさいとき、おばあちゃんのとこにいて。あのこ、あの、あれ、おとうともいっしょに」
しばらくして利用者さんは話し始めました。

喚語困難が強く、目的のことばが出ないために「あれ」「これ」などの指示代名詞が多くなってしまう方です。
こちらから内容を細かく確認しながら、聞きすすめていきました。

年の離れた兄・姉がいたこと、長期入院していた姉がいたこと、事情があり引っ越しをくり返していたこと、母親が病に倒れたこと、家族がいっしょに暮せなかった事情が少しずつわかってきました。

「あれ、あれにはもどりたくない。こどものころはいや。じぶんは、あの、あのー、はたちくらいがいいなあ」
どうして二十歳なんですか?と気になってたずねました。
「あの、あのころはもうじぶんできめられた。じぶんでおおさかにくるってきめてきてん。はんたいされても」

子どものときは「嫌だ」「本当はこうしたい」と思っても他の選択肢がなかった、二十歳になって、家族の事情に振り回されず、自分の道を決められるようになった、二十歳になってやっと自分の人生が始まったんだと、ねばり強く時間をかけて伝えて下さいました。


結果としては、ことばがつながり、今まで聞いたことがなかったお話が聞け、利用者さんの人生に触れることができました。
ある意味、よかったと言えばよかったのですが、つらかった思い出までいっしょに引き出してしまい、利用者さんがどんなお気持ちになられただろうかと悩みました。

配慮が足りなかったと思います。

「子どもの頃はみんな楽しかったに違いない。どんな楽しかったエピソードが聞けるだろうか」としか想像できなかった、能天気な子ども時代を過ごした自分の甘さを反省です。
posted by Active at 11:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ST水野(松原)の日記
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