2020年05月26日

共感力。


京都大学学長(霊長類学、人類学)でゴリラの研究で有名な山極壽一さんは、
「コロナ禍を生きるキーワードは"共感力"」
ではないかと提唱しています。

「スマホやインターネットを通じて、多様な人々が交流する現代では、誰を信頼していいのか、どんな情報を信用していいのか、多くの不安がつきまとっています。バーチャルな世界でのつながりはかえって人々を孤独にし、人間を均一な情報に変えていきます。人間は工業製品ではありません。個人は誰も変わることができない自律的な存在で、だからこそ、多様な人々がつながりあうことによって新しい世界が開けるのです。いま一度、人類の歴史を振り返って家族と共同体の重要性を再認識し、再確認し、共感力を用いた信頼できる仲間づくりを心がけるべきであろう」

参考)
2017年のインタビュー記事
▼「チームワークを発揮できるのは全動物の中で人間だけなんです」前編
▼「人間の五感はオンラインだけで相手を信頼しないようにできている」後編
詳細はこちら↓
▼「共感資本社会を生きる」はこちら↓


「共感力」(Emotional Intelligence (EI,感情的知性)シリーズ、ハーバード・ビジネス・レビュー編集部、ダイヤモンド社、2018年)
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私たちの脳には、いわゆる知能を司る領域と共感力を司る領域の双方があり、いずれも前頭前野に存在します。

その機能は相互に牽制しあうような関係として抑制をかけ合う形で機能が表面化することが多く、知能を司る領域のほうが共感力を司る領域よりも弱いことが大半といわれています。

また知能よりも“共感力”に重きを置いている人のほうが大多数ともいわれています。

“共感”の3タイプとは…
@認知的共感:他者の視点を理解する力
A情動的共感:他者の感情をくみ取る力
B共感的関心:相手が自分に何を求めているかを察知する力

この3タイプの中でもっとも医療・介護・福祉職の現場で必要とされるのがB共感的関心である。

共感的関心を持つには、他者の痛みを感じる力を保ったまま、自分の苦悩とうまく付き合うことが求められる。

この共感的関心と密接な関係性にある情動的共感を呼び起こすには、相手の感情に対する自分の反応に意識的に注意を向け、他方では表情や声の調子などから相手の感情を幅広く読み取ることとしている。

また、他人の感情を理解するにはまずは自分の感情を理解する必要がある。

私たちは、他者の苦悩を我が事のように受け止める時には直感を頼るが、相手のニーズに応えるかどうか判断する時は、その人の幸福が自分にとってどれだけ重要かを熟考するとしている。


“共感”を制御するには…
体にピンが刺さってケガをしている人を見ると、普通、私たちの脳から痛みを感じる部位が反応しているという合図が発せられる。

ところが医学部では、無意識のうちに起きるそのような反応さえもコントロールするよう教えられる。

このため医師たちの場合、側頭頭頂接合部と前頭前皮質にある、“感情を無視して集中力を高める働き”を持つ神経回路から反応を抑える麻酔のようなものが分泌される。

こうした作用は、他者と距離を取って平静を保ち、相手の力になろうとする時にも起きる。

感情が高ぶる状況で問題に気づき、集中力を高めて解決策を探さなくてはならない場合にも同じ神経回路が活性化するとしている。

以上、
「共感力」(Emotional Intelligence (EI,感情的知性)シリーズ、ハーバード・ビジネス・レビュー編集部、ダイヤモンド社、2018年)より


このような作用や実際の場面はリハビリテーションの仕事の現場でも身に覚えがあるように思います。

何かの疾患や障害により、何らかの喪失体験をされたであろう利用者様と一緒に、これからの人生を再構築する過程において、私たちの仕事は常に“共感”を人から要求される仕事で、かつ“共感を養う”ことが欠かせない仕事であることがあらためて確認できました。

その一方で、このブログには詳しくは記していないですが、「共感力」本のなかの"共感するにも限度がある"記事の知見は、共感力が必須条件でもある医療・介護・福祉職には必見です。

“共感を制御する”ことは“共感疲労”や“バーンアウト(燃え尽き症候群)”を回避することにもつながり、他者に同情し過ぎないように、自分が苦しくならないようにうまくバランスを取らないといけないことも…


いずれにしてもこれら3タイプの“共感”に合わせて、“傾聴”も大きなカギになってくるはずです。

○最も高度で優れた傾聴とは?
○聴き手がトランポリンのように話し手に果たす役割とは?
について、昨年8月9日の実務者研修2019/20のスクーリングB「傾聴、コミュニケーション等について」でもお話しさせていただきました。
▼人は自分が思ってるほど聞き上手ではない、良い聴き手とは↓

異業種から学ぶ越境学習が、患者さま、利用者さまの人生に直接的に関わる時間が圧倒的に長い生活期、地域リハビリテーションでは特に重要と考えています。

もし職業経験の少ない、もしくはほとんど無い現役新卒者の方々であれば、利用者様の職業経験やその時の生活の様子をナラティブにお聴きすることで、そのお仕事や趣味、趣向を部分的に経験したかのような感覚になれると思います。

利用者さまの人生の物語りにどっぷりとつかり自分事のようにお話しを聴き入ってみる、そして利用者さまに、自分自身に問いかけてみることです。

その姿勢が利用者さまに“共感”を示し、私たちの“共感を養う”ことになり、利用者さまの趣味や興味のあることに私たちも興味を持つことにもつながります。

ひいては利用者さまご自身の今までの人生の認識を深め、自分らしさや人生の中で大切にしていることを探索するきっかけにもなるはずです。
posted by Active at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 人材開発室
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