2020年12月28日

キャリア・インタビュー「考えたことがなかった」「そういうもんかなと...」 OT藤原 啓介さん(吹田)


キャリア・インタビュー
「考えたことがなかった」「そういうもんかなと...」

氏名:藤原 啓介さん 職種:作業療法士(10年目) 所属:吹田 就職年月日:2018年6月1日
取材期間:2020年7〜12月


1.今の仕事に至ったきっかけ、経緯、転職のこと、転機のこと、キャリアを振り返ると...

大阪にある大学を卒業後に
「何をしたいというのはなく」
「特にやりたいことがなかった」
ということから、ガス機器のサービスショップになんとなく就職するものの1年で退職。

知人の伝手でカラオケ機器の営業販売、レンタル、設置の仕事に就きました。

その会社がしばらくすると大手企業に合併され、1ヶ月程度の出張勤務が多くなるようになりました。

営業の仕事では先輩や顧客から怒鳴られたりもしましたが、営業のコツを学んで成果が出たときは楽しかったです。

28歳の時に結婚も決まりました。

出張勤務を繰り返しているうちに岡山への半年間の本格的な転勤、単身赴任が決まったときに、これからも家族と暮らせないことが続く当時の勤務形態に将来を見通せなくなり退職を決意しました。 

しかし、やみくもに転職しても同じことを繰り返すと思い、何か資格を取得しなければと考え急いで探しました。 

保育士など目に入る資格職はありましたが、その時にたまたま受験日や試験内容などの条件が自分に当てはまる新設校の作業療法専門学校の学生募集を見つけました。

願書締め切りギリギリのタイミングで、どんな仕事なのかもよく知らないうちにとりあえず試験を受けてみることに。

「それがなんと合格してしまい...」

複雑な心境のなかで後ろ髪を引かれるかのように退職願いを会社に提出しました。

しかしその1〜2週間後に妻の妊娠がわかり、一旦提出した退職願いを引き下げることも出来ず、退路を断たれたような感じで3月末で退職しました。

退職数日後の新年度4月から作業療法専門学校生の生活が始まりました。

夜間制の学校で18時からの講義開始までの間、日中は生活費と学費を稼ぐために、介護のことは何も分からないまま頸髄損傷や脳性まひ等、重度障がいのある方々の訪問介護の仕事、土日はスーパーの警備等をしました。

病院夜勤も経験しオムツ交換等、全ての仕事が新鮮でその時のことを振り返ると、今のOTの仕事にとっても生きた勉強になったと思います。

「後ろを振り返ったり周りをみる余裕もなく…決められたことをやるのみ…」

365日休みなく朝から仕事に行き夜は学校で勉強...と、仕事に、結婚生活に、子育てに追いに追われた慌ただしい4年間の学生生活でした。

卒業後は回復期リハ病院で7年間勤務しました。回復期リハ病棟や外来リハでのOT業務を経験しました。

自宅から職場が遠かったこともあり、元々興味のあった訪問リハ分野での仕事を志望するようになりました。

この時も「訪問リハ分野を経験してみたい」、「そんなに考えないで...」アクティブに就職しました。


2.今の仕事、働き方

月〜金曜日、9〜18時、訪問4.5日/週、デイ 0.5日/週
仕事をこなしていくことに必死で仕事に追われているという現状です。みなさんからアドバイスを受けながら改善しているところです。


3.仕事での苦労、醍醐味

 利用者さんと家族さんの希望する事の相違を、すり合せていくところが苦労する点でもあり、上手く合わせていくことが醍醐味でもあります。


4.仕事の魅力、やりがい

リハが終わって「今日もありがとうね」と一言声をかけてもらった時は、嬉しい気持ちになり、仕事のやりがいにもつながっています。


5.仕事をしていくうえで大切にしていること、心がけていること、座右の銘やモットーなど

利用者さんの前で暗い顔をしない。常に笑顔でいることが大切にしていることであり心がけています。
座右の銘は「日進月歩」です。私自身が日々コツコツと努力していくことが苦手ですので、日々計画を立てていける人間になりたいという気持ちも込めて、この言葉を選びました。


6.家庭と仕事の両立の秘訣は?

両立の秘訣といえば両立が成功しているようですが、しっかりと両立できている自信はありません。 
一人娘の習い事の送り迎えや週末の買い物などが家での主な役回りです。
家庭に仕事は持ち込まないことが良いことかと思っています。


7. わたしの事業所自慢

職場の仲間だと思います。入職後担当を持たせてもらい、わからない時に相談できる頼りになる仲間が事業所にいることがわたしの事業所自慢です。


8.わたしの作業療法士像

今回のインタビューを受けるまであまり考えたことがありませんでした。
作業療法士は日常生活動作に対して作業活動を通じてアプローチしていける。
利用者さんがいつの間にかできなかったことが出来るようになっているような関わりがしたいです。


9.これから仕事でチャレンジしたいこと

 高次脳機能障害のある利用者さんのご家族さんには、理解されにくいところが多いかと思います。わかりやすく伝えられるように勉強したいです。


10.いちばん落ち着ける場所

やっぱり自宅です。自宅に居るどんな時でも落ち着いていれるように思います。


11.これがなければ生きていけない

私にとっては家族。
理由を聞かれても当たり前過ぎてうまく言えません(苦笑)
「そういうもんかなと」


12.夏休みの宿題のやり方(前半詰め込み型、後半追い込み無計画型、まんべんなく計画型)

 後半追い込み無計画型です。自分の理想では計画を立ててまんべんなく終わらせたいと思っていますが、すべて後回しになってしまいます。


13.キャリアを振り返ってみて家族にもひと言

今までもありがとう。これからもよろしくね。恥ずかしくてなかなかうまく言えませんね(苦笑)



藤原 啓介さん 略歴)

2011年3月 平成リハビリテーション専門学校 作業療法学科 卒業

作業療法士、46歳男性、神戸出身で妻と小学6年生になる長女の3人暮らし。

寒い冬もアウターの下は半袖ポロシャツ姿が定番の藤原さんで、夏は利用者さんに「雨に降られたん?」と心配されるほどの"大汗かき"さんです。
「はい、わかりました!」といつも相手に関わらずハキハキ返事と持ち前の優しい雰囲気で職場でも利用者さんにとっても癒し系キャラです。


■オンライン・キャリアインタビューを終えての感想■

インタビューを通して、今までの経験を思い出すのと同時に、今までその場その場であまり考えないで過ごしていたことを、考え直すことができるキッカケになりました。
初めはオンライン自体にも不慣れなため、何度かスマホ操作を誤ったりして、話半分になっていたところもありました。繰り返すとどうにか慣れることができました。
6ヶ月間のオンラインでのインタビューを通して、リハ業務での利用者さんとの関わり方や日々の書類作成と管理の業務改善までを考えながら行動するようになりました。
今まで過ごしてきた経験や習慣は容易には変えることはできないと思います。
でも今回のように人生のたった6ヶ月間で仕事のなかで考える習慣がついたというところに、今までの自分と比べると大きな違いを感じ取ることができました。


■キャリアインタビュー記事編集担当より■

「考えたことがなかった」「そういうもんかなと...」
これは今回のインタビューの各設問で藤原さんからたびたび聞かれた言葉です。

藤原さんは作業療法士像についても「考えたことがなかった」と話されていました。 

また仕事のなかのことでも「そういうもんかなと...」と話されることがあり、自分の置かれた種々の状況を受け流すような心もちでおられたように感じました。

このような姿勢が影響したためか、仕事のなかでもあまり良い方向に作用しない時期がありました。

そこで日ごろの仕事の振り返りも兼ねて、今回のインタビューをこちらから提案し行わせてもらうことになりました。

藤原さんも快く協力してくださり、毎週火曜日の夕方にzoomやLINEを用いたオンラインでの1on1インタビューを半年間にわたり行なわせて頂きました。

オンラインインタビュー開始当初から労働観や働く動機、モティベーション等の自己理解やキャリアデザインに関することに加えて、日ごろの業務改善の具体策についても対話が促進されました。

2020年7月の開始から20数回に及ぶインタビューは、短いときで10数分程度、長い時は60分近くに及ぶこともありました。

そのなかで分かってきたことがありました。

藤原さんは人と接する意欲や人間関係動機は高いものの、 “先のことをその場で考えないこと、何かしらかの手を打たない”、そしてこれにより"要改善事項を先送りにしてしまう"という仕事の中での思考のクセや行動パターンでした。

加えて今までの仕事や人生のなかの転機や節目とも言えそうな様々な場面で、自分の感情や価値観等を深く考える機会を作ってこられなかったようでした。

これによりセルフ・アウェアネス(自己認識力)が低い状態となり、自分の本当の価値観に目をつむり、心の動きのままに流されそれに引きずられた意思決定を続けてこられてきたのではないかと感じました。

それらに対して“why なぜ?”より“what 何をすべきか?”に着目し、藤原さんに合わせた具体策を一緒に検討して策を講じ続けるサポートを吹田事業所の運営責任者PT政岡さん、人材育成担当PT軽部さんと行い、しばらく見守ることになりました。

インタビュー開始から約6か月経過した現在では、書類作成や管理等の業務改善が少しずつ図られ、正確性と効率性が増し、残業時間が大幅に短縮化されました。

そして、利用者さんとの関わりにおいても、
「利用者さんとの距離が近くなった」
「話を膨らませることができるようになってきた」
「より一歩深く踏み込んだ関わりができるようになってきた」
と、良い変化が見受けられています。

また主体的に今の仕事にイキイキと取り組めているとのことで、藤原さんのこれからの活躍がますます期待されます!!


今回のインタビューでも取り入れたジョブ・クラフティングという考え方を紹介します。

ジョブ・クラフティングとは、仕事への取り組み方を見直したり、自分の強みを発見したりすることで、“やらされ感” のある仕事の中に主体的にやりがいを見出していこうという考え方です。

「組織や上司が決めたタスク・ルールに忠実に従う」という従来の労働観に異を唱え、職員の主体性を重視することで、仕事を自分らしく生き生きとしたやりがいのあるものに変えていくことを目指しています。

職員の仕事の有意味感や満足感、自己効力感が得られ、組織は従業者のエンゲージメント(会社とのつながり、愛着心、誇り)の高まりによる生産性や定着率の向上が期待できるといわれています。 

今回のオンラインインタビューではジョブ・クラフティングの考え方を参考にした対話を通して、仕事の中身の振り返りと自分の能力や行動等の棚卸し、そして業務にひと工夫加えることをお手伝いしました。

変化が激しく予測もしにくい今のコロナ禍の社会情勢においては、職員が組織から与えられた役割をこなすだけでなく、個々が持っている能力や関心等の強みを活かして、自ら仕事をつくり変えていく発想を持ち行動することは、職員自身がいきいきと仕事をするためにも、組織や会社にとっても大切なことなのではないでしょうか。


神戸大学の金井教授は、キャリアの転機、節目(キャリア・トランジション)だけは、そのときに立ち止まって、キャリアを振り返り、これからの展望をいつもより深く考える必要性があるとしています。
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さらにキャリアは全てデザインしきれるものではないという観点から、節目以外はドリフトして(流されて成り行き任せ)もいい、その方がむしろ伸びやかに過ごせるとしています。

以下の四つの段階のキャリア・トランジション・モデルを提唱されています。

1.キャリアに方向感覚を持つ
 現実吟味できる夢を探しつつ、節目ごとの夢の修正を行なう
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2.節目だけはキャリアデザインする
 人生や仕事生活の節目ごとに、@何が得意かA何がやりたいかB何に意味を感じるかを自問する

3.アクションをとる
 よい我慢はしつつ、頑張ってアクションを繰り返す

4.ドリフトも偶然も楽しみながら取り込む
 次の転機まで安定期にも退屈することがないように、偶然やってきた機会も生かす

 キャリア・トランジション・モデルの詳細はこちら↓

▼偶然も活かすプランドハップンスタンス理論の詳細はこちら↓


このような姿勢で日頃の仕事に向かうことで、個々が自分自身のキャリアに方向感覚を持つことができるようになり、いつもの"やらされ仕事"から"やりたい仕事"へと昇華し、その結果どんな仕事も"自分のモノ"となり、"仕事を自分ごと化"することになるのではないでしょうか。


 参考文献等)
◉「セルフ・アウェアネス」ハーバード・ビジネス・レビュー編集部、ダイヤモンド社
◉「働くひとのためのキャリア・デザイン」金井壽宏著、PHP新書
◉日本の人事部HP「ジョブ・クラフティング」
◉エンジャパンHP「社員の働きがいを生み出すジョブ・クラフティングを首都大学東京高尾教授に聞く!」
◉スタディ・ハッカーHP「ジョブ・クラフティングとは?4ステップで働きがいを見つけよう!」
◉プレジデント・オンライン「つまらない仕事を変える自律的な働き方」
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◉JH倶楽部HP「ジョブ・クラフティングでストレス低減、生産性向上を!」
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追記)
初めての試みとなったzoomを用いたオンラインでのキャリアインタビューの様子。
ブログ画面を画面共有しながら追記、修正を進めます。
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取材の最終段階ではインタビューとブログ記事の修正を同時に行わせていただきました。

いつも快くインタビューに協力してくださった
写真右下の藤原さんには感謝です。ありがとうございます。

藤原さんによると今回のインタビュー記事は、
「妻に見せると、どないしたん?と言われそうで…恥ずかしいので…妻には見せません(苦笑)」
とキッパリ話されていました。


 キャリアインタビュー記事編集担当
人材開発室・心意気実践チーム 伊藤健次郎
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posted by Active at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 人材開発室
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