人材開発室のOTいとうです。
ナラティブとは。
物語り。
ラテン語のnarrareに由来する。
これは述べる、説明する、物語るといった動詞。
"もの"は古典文学において、指し示す対象は特別なものに限られるため、ナラティブとは語られるべき特別なストーリーということになる。
2000年前後からヘルスケアの世界で浸透している。
ヘルスケア全般で実践可能なナラティブ・アプローチ。
ナラティブ・ベースド・メディスン。
最近では、ナラティブ・アプローチの新しい実践と思えるオープンダイアローグ。
ケアする側にもナラティブがある=ケアする人とされる人が完全に対等な人間だという前提に立つ
ケアする人とされる人の二者関係がある
"ケアするけど私の前にケアされるあなたがいる"
"ケアされる私の前に、ケアするあなたがいる"
ミルトン・メイヤロフは、ケアの本質とはケアされるその人が本来的にもつ権利を認め、その人がもつ成長への要求に応えことで、その成長を助けること。
"ナラティブ・アプローチを実践するには"
コロンビア大学のリタ・シャロンは、構築論的ヘルスケアを実践するには、"患者の前から逃げ出さずにいられる能力"とした。
患者の人生史への敬意を表する問い。
「あなたはどんな人生を歩んでこられたのですか」
ケア者がもつべき能力とした物語能力narrative competence
"病いの物語を認識し、吸収し、解釈し、それに心動かされて行動するために必要な能力"
本質的に重要なのは、患者の側の視点に立とうとする態度であり、患者の人生史にも関心を向け、敬意を払おうとする態度であろう。
そこにいるケア者たちは人生史のなかの最重要な局面に立ち会っている、きわめて特別な存在だからである。
ケア者がどんな態度で患者、家族の前に立っているのかは、生涯忘れられない記憶のなかに組み入れられるのである。
"小説とは違い書き換えることができるナラティブ"
ナラティブ・アプローチは、解釈的、調停的、介入的の三つの多面的な様相がある。
解釈的→他者理解のための手がかりとする
調停的→複数の他者の不一致や対立を調停し、全員が納得するように意思決定を行う
介入的→他者のナラティブに立ち入り、自分の評価を伝え、場合によっては再考を促す
"空気のようなナラティブ・アプローチ"
医療の現場で必要不可欠な関わりで大きな意味あることとみなされているはずなのに…
心理療法などの専門的な実践以外の対話的な実践に対しては診療報酬の対象にしていない。
ある種の能力や態度、一定の技能の習得、修練なり経験が要ることも誰もが分かってことなのに…ナラティブ・アプローチについて学ぶカリキュラムは、日本の医療従事者養成課程にはほとんど存在しない現実。
対話に専門性を認めない考え方は、日本の医学教育の弱点になっている。
「対話と承認のケア〜ナラティブが生み出す世界〜」宮坂道夫著、医学書院
ナラティブ・アプローチのプロセス
1.準備
相手を問題のある存在ではなく、別のナラティブの中で意味ある存在として認める
2.観察
関わる相手の背後にある課題が何かをよく知る
3.解釈
相手にとって意味のある取り組みは何かを考える
4.介入・検証
相手の見えていない問題に取り組み、かゆいところに手が届く存在になる
「他者と働く〜わかりあえなさから始まる組織論〜」宇田川元一著、NEWS PICKS publishing社
私たちが現実だと思っていることはすべて社会的に構成されたものです。
もっとドラマチックに表現するとしたら、そこにいる人たちが「そうだ」と合意して初めてそれはリアルになるのです。
当たり前だとされてきたものに内在している限界や偏見が見えるようになったとき、人は別の選択肢を考える自由を与えられるのです。
社会構成主義的なものの見方をする利点の一つに、"完璧な解決策"を求めるのは、おしまいにして"人の好みはそれぞれ異なる"ことの価値を認められるようになること。
人生を語り直すことで問題を変化させられると信じています。すなわち、新しい物語を構成することができ、それによって新しい行動を開始することができるのです。
組織とは数々の小さな文化のようなものであり、リアルなこと、良いことについての共通理解がその文化をまとめているということです。文化をまとめる際に中心的な役割を果たすのが彼らの物語です。歴史と運命に対する共通感覚を生み出すような物語はとりわけ重要となります。
個人のリーダーシップから関係性のリーダーシップへ。
リーダーシップは、リーダーの所有物ではなく、そのコミュニティの一つの側面。
ビジョンや目標は一人の人間がつくり上げるものではなく、関係者たちの対話から生まれるもの。
「現実はいつも対話から生まれる」ケネス・J・ガーゲン、メアリー・ガーゲン著、伊藤守監訳、ディスカヴァー社
職場におけるwell-being(※幸福感、満足度、自分らしさ=自分をも忘れる)が高ければ、well-doing(生産性、収益性)も上がる。
※well-being≠幸福感→再定義中
その肝、重心は信頼の文化。
信頼の文化がある国や組織は反映しやすい。
信頼の文化を築くための3つの問い。
Q1仕事は順調ですか?
Q2人生は順調ですか?
Q3ご家族は幸せですか?
一週間に一回ぐらい聞くといいとわかっている。
信頼の文化を作るには、相手の仕事、人生、プライベートを全方位的に気遣うこと。
「フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略」石川善樹著、NEWS PICKS publishing社
組織文化とは、ある事実に対して組織に属する一人ひとりがどのように感じ、どのような反応をしたかという感情の集積です。
一人ひとりの言葉や行動、習慣を意識的に変え、それが染み込んで無意識的にできるようになってようやく組織文化は変わります。
変革している間も双方向でやり取りしていくことを常に意識すること。
長期間かかることを前提に、粘り強く継続すること。
ウィニングカルチャーとは…
自ら問い続けること。
一度導き出した解をあえて自分で疑い、自問をくりかえし、過去の成果に甘えることなく、自分の殻を破って謙虚に学び続け、進化や成長を止めないこと。
「ウィニングカルチャー〜勝ちぐせのある人と組織のつくり方〜」中竹竜二著、ダイヤモンド社
ナラティブと組織文化づくりを考える。
ナラティブも組織文化も目には見えない空気のようにどこにあるのか、定義や捉え方もわかったようでいても何か分かりにくいもののような…
ナラティブを単なる個々のストーリー、物語りという意味ではなく、その人ならではこだわりや好き嫌い、前提、一般常識、世界観、解釈の枠組みと、捉えて組織文化づくりを考えてみる。
個々のナラティブが織り成して組織のナラティブとなり、それらが組織文化をつくる。
それは感情的な結びつきを含む双方向の関係性がある信頼の文化。
その組織文化を変え、そしてつくり上げるには…
個々のナラティブを互いに眺め合い、認め合い…
自分のナラティブを先ず一旦脇において…
相手の前提や世界観、価値観に飛び込んで…
対話を通してその関係性を変えるようにし…
思いやりをもって…
組織と個々のパーパス(働く目的や意義)をすり合わせて…
それを粘り強く続ける…
そこを乗り越えた先にあるのか。
きっとある。
それはそれは長い道のりになりそうだ。
でもそれはそれはエラいやりがいのありそうなことだ。
いやそれは間違いなくやりがいのあること。
▼職場での課題解決に向けた対話「ナラティブなワークショップ」にも取り組みました↓
アクティブの仕事の図。