コロナウイルス感染が蔓延する以前の話になりなすが、堺デイサービスでの活動を久しぶりに報告します。
頚髄症性脊髄症(OPE後5年経過)のご利用者様
歩行障害があり、当初は当社の訪問リハビリを利用されていましたが、散歩は習慣化され、ご家族の体調が思わしくない時は買い物をされたり、知人との食事やカラオケも参加されるようになり、2年前に訪問リハからデイサービスに移行となりました。
現在も、散歩は継続されていて近所の喫茶店やサロンにもよく通われていますが、手指の巧緻性低下(筋力低下とともにしびれや感覚障害があり)により、手を使う作業に対しては「何もできない」と、よく話されていました。
80歳まで居酒屋を夫婦で営まれており、生きがいとされていたようで、当時のお話を聞くといつも楽しそうにお話されます。

(大手企業に掲載された社報も大切に保管されています。)
当時は接客が主な仕事でしたが、「おでんの出汁」と「どて焼き」の味付けはご本人が行っておられました。機能評価の上で作業工程を確認し、作業が可能と判断。
そこで、デイサービスで『居酒屋 ●●』オープンを計画。


どて焼きを6年ぶりに作っていただきました。
提案当初は、「わしは無理やで、(療法士が)やってや。」とおっしゃられていました。しかし、予定日が近づいたある日、モニタリングに伺うと、ご自分で昔使っていた道具を自ら準備して下さっていました。
調理開始。

調味料をボウルに目分量で入れてかき混ぜていきます。
はじめは座って作業していましたが、すぐに「立ってやるわ。」と立位で味見をしながら調味料をしっかりと混ぜて行きます。

鍋に下処理したスジ肉と調合した調味料を投入。

鍋も焦げ付かないように、水を差したり、混ぜたり。「これもいいリハビリになるわ。」と、
物理療法などのスケジュールの合間に鍋の確認を行います。
デイサービス内にいいにおいが漂うと、他のご利用者様からは「(調味料は)何をいれたん?」「肉はスジ肉以外でもいいの?」「味見させて。」など、話が盛り上がりました。
最後にご利用者様、職員に食べていただき、皆さんから「おいしい。」と言われると、「楽しかった。よかった。」「居酒屋をやめて、もう二度と作る事はないと思ってた。」「できないと思ってたけど、思ったよりもできた。」と話されていました。
デイサービスのお帰りの際には「これ持って帰っていい?」と手作り和帽子と調理をしている写真を持って帰ってくださいました。後日、写真のことを伺うと、部屋に飾られているようで「見ると(嬉しくて)涙がでてくる。」と話されていました。どて焼きもご自宅にもお持ち帰りいただき、奥様からも「おいしかった。」と言っていただいた様です。
今回の調理は、日常生活に直接つながる事ではありません。また、習慣化するものでもありません。ただ、ご利用者様の達成感や満足感を拝見し、本当にやってよかったなと感じました。