心意気実践チームの室之園(むろのぞの)、いとう、日野上(ひのがみ)です。
いよいよ実務者研修2018/2019は、開講しておよそ1年になるこの日が最終回の介護計画発表会となりました。
受講生がそれぞれの事業所のデイサービスや訪問看護・リハの利用者様からご理解とご協力を頂いた方々を介護計画のケースとして挙げさせてもらいました。
実際の現場での関わりのなかから情報収集し、アセスメント作成、個別援助計画、介護計画を立案して発表をしてもらうのが、最終回のスクーリングの大きな目標です。
●山城さん(吹田)●
ケースは弊社のデイサービスと訪問看護・リハを利用されている左片麻痺、注意障害等の高次脳機能障害のある利用者様です。
自宅内の写真を用いて、家屋環境やご家族の支援状況等を説明されています。
「主婦業への復帰に向けた自立生活支援を」。
「大阪万博へ行きたい」。
「一人での外出へ」。
という利用者様の具体的な希望に向けた介護計画の報告でした。
みなさんからの質問・感想等)
○写真があって分かりやすい発表。
○アセスメントをICFでよく情報を調べて整理されていて、その人がよく分かる報告。
○それでもまだまだ思うように支援が進んでいない状況がわかった。
○ご家族に向けた自立生活支援(ご本人の自己効力感につながるような)も考えては…
引き続き、自立生活支援に向けた働きかけを行なっていくことになりました。
●今田さん(大正)●
ケースは高齢者住宅に入居中の左片麻痺等のある利用者様です。
「デイサービス利用時は歩いて行きたい」。
と、開始当初から希望があった利用者様です。
目標と援助計画は、
「安全で安定した歩行を行い、島根や同窓会に行くことができる」
「身なりを整えて外出できる」
今田さんは、これらの計画をデイサービスの療法士等からの協力も得て実際に取り組み始めたのが昨年の12月。
約半年経過して…
○施設内で歩行機会が増えて、車椅子での移動が減ってきている
○スズメにパンくずをあげる楽しみを続けている
○トマトと牛乳をヘルパーさんに買ってもらうのは変わっていない
○今月末、神戸に同窓会へ行くことになっている
○外出時は身なりを整えることができている
継続して今回の介護計画を実践することを確認できました。
●中村さん(松原)●
ケースは頚椎症のあるデイサービス利用者です。要支援と自立度の高い方です。
「家族との遠出は周りに迷惑をかけたくないのであまり行っていない」。
「杖なし歩行で家族と旅行をしたい」。
という利用者の希望があります。
詳細な生活歴の情報収集、アセスメントがあり、それにより深まる"その人となり"です。
具体的な個別援助計画は、
「デイサービス利用時の杖なしでの屋外歩行の実施」
「肩の痛みに対する自主トレーニングの提案と実施」
「入浴の浴槽出入りできるように」
と介護計画を考えていました。
利用者様は、
「体力がついたら、杖なしで歩行ができれば家族と遠出するわ」。
と、話されているとのこと。
目標達成出来たのかの評価、目標設定の考え方について、みなさんで確認しました。
"家族にも迷惑をかけずに…"、"体力がついたら…"、"杖なしでの歩行で…"と、目標設定の妥当性やその評価の目安については、引き続き利用者様や担当療法士と検討していくことになりました。
今後も検討と支援を深めるためのモニタリングや住宅チェック等でフォローアップすることになりました。
●北谷さん(松原)●
ケースは腰椎すべり症のデイサービス利用者様です。
コーラス活動等の参加が多彩で、リハビリテーションにはとても意欲的な利用者様です。
数カ月前に自宅前での転倒による足の骨折があり、
「コーラスのステージに出たい」。
という当初の希望、目標から、
「買い物に先ずは行けるように」。
「掃除をもう少しきれいにできる」。
という目標に変わってきているとのこと。
意欲的だった利用者様は、
「家に居るのが楽やなあ」。
「人の迷惑になりたくない」。
とも話され、不活発な状態が続いているようです。
具体的な個別援助計画は、
「立位保持時間を延ばす」
「転倒を予防する方法を具体的にする」
「コーラス活動を継続する」
から
「人のために動く、元気になってもらう」ということを、デイサービスの他の利用者様や地域の方々に声かけする等のケアをすることが、ケースにとっての自己効力感や自立生活支援につながるのでは…
活発で意欲的で心身的にも元気だった時から、視点、視座を少しずつ変えていく試みも年齢的・心身機能的にも必要なのかもしれない…
というところまで検討が深まりました。
そして、修了式です。
「終わりは、始まりでもあります…」。
「ぜひ介護福祉士の資格を取得してもらい、弊社のともに行う訪問介護事業所で自立生活支援サービスを提供していけるように…」。
阪東校長からの労いの言葉がありました。
毎回のレポート作成や発表当日の発表用の読み原稿まで綿密に準備を施した山城さん(吹田)です。
実現可能性の高い分かりやすい報告でした!
「各事業所の方々とのこのような学びの場を作って頂いたことに感謝です」。
と、最後のコメントでした。
物静かでグループワークでは発言は多くありませんが、着実に介護計画立案と受講者で唯一実施まで進めていたしっかり者の今田さん(大正)。
「介護福祉士の資格を取ります」。
と、はっきり明言してくれていました。頼もしい限りです。
あっけらかんとしてなかなか的を得た発言をサラリとしてしまう北谷さん(松原)。
「もっと深く考えて発表できればよかったです」。
と、話してくれていましたが、発表後の議論が深まる良い報告でした。
主婦目線の介護・支援の視点がいつも印象的だった中村さん(松原)。
「勉強は嫌いです」。と言いながらも、「最後は楽しくできました」。と話されてました。研修の中盤以降からの介護計画立案では、のめり込むように取り組まれているのが、こちらからもよくわかりました。
各演者のみなさんの報告で様々な意見や感想が続きました。
学ばせていただくことがたくさんありました。
日頃の支援のなかで通り過ぎていそうなことを、深く掘り下げていくケーススタディは気づきや学びが多いことをあらためて感じました。
ケースとしてご協力頂いた利用者様、研修会参加に際し、協力頂いた各事業所責任者、職場のみなさん、ありがとうございました。
●実務者研修講師を担当してみて・・・【室之園より】
発表された皆さんを拝見し、「あぁ、本当に一人の利用者様のことを真剣に考え、悩まれたんだろうな」と感じ、感動しました。
山城さんは研修以外の時間にも個人的に質問して下さったり、すでに国家試験勉強の準備をしていたりと、そのモチベーションの高さに毎回刺激をいただいていました。
中村さんは勉強嫌いだとおっしゃっていましたが、後半の振り返りシートにはわからないことがわかるようになることの喜びをたくさん書いてくれるようになりました。
今田さんはあまり自己主張される方ではありませんが、ちょっとのことでは折れない非常に芯の強さをお持ちの方だなと思いました。最後の資格取得宣言はシビれました。
北谷さんは自然と周りに笑顔とパワーを与えてくれる方で、考えが煮詰まってきた時はその雰囲気を一気に払拭できるとても介護職向きな方だなと感じました。
人が変わっていく瞬間に立ち会えること、ましてや自分がその時間に関与できることは、人生の中であまり多くはないと思います。
こんな素敵な時間をいただけたことに感謝し、最後に世界一貧しい大統領「ホセ・ムヒカ」のスピーチを贈りたいと思います。
『人生はもらうだけではだめなのです。どんなにボロクソな状態でも必ず自分よりも悲惨な状態の人に何かを与えられます』
今回発表してくださった利用者様の中にはご家族、職員からの支援があるものの、自分らしい生活を送ることができていない方もおられました。
ホセ・ムヒカの言う、『悲惨な状態の人』というのはまさに私たちが支援させていただいている要介護状態にあるご利用者様ではないかと思います。
私たち介護職の役割はその『何か』を想像、創造し、実践(支援)させていただくことだと考えます。
この1年間が皆さんにとって『介護とは何か』を振り返る原点になれば幸いです。
本当に1年間ありがとうございました。
心意気実践チームでは、ともに行う訪問介護事業所を通して、訪問看護・訪問リハビリテーション修了後もしくは並行しての自立生活支援に向けた見守り的援助サービスの確立を進めていきます。
介護職や療法士のみなさんの新たな働き方の提案でもあります。ご理解とご協力よろしくお願い致します。